千紘さんのありがた~いお話
「本日は、ミルクたっぷり飛鳥鍋です。
 鶏の出汁がきいてて、おいしいですよ~、たぶん」

「たぶんってなんだ?」
と鍋つかみのパクパクを手で止めて、千紘が訊いてくる。

「いやいや。
 ゼミ旅行で奈良の明日香村に行ったとき、民宿で食べたのはおいしかったんですけど。

 これは私が作ったので知りません」
と言いながら、真昼はキッチンに戻った。

「深夜、民宿のおばさんたちが居る母屋の戸を叩いて、お腹が空いたので、火鉢を貸してください、と言ってしまうくらい消化もいいんですよ」

「それはいい話なのか?
 食っても、すぐに腹が減って、寝られなくなるって話だろ?

 っていうか、その火鉢借りてなにしたんだ」

「友だちがお土産に買ってたお餅を焼いて、みんなでむさぼり食いました。
 おしいかったです。

 今でも忘れられない味ですね~」

「それだと、おいしかったのは、飛鳥鍋じゃなくて、深夜にむさぼりくった餅ではは……」
と呟きながらも、千紘は鍋を運んでくれた。





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