千紘さんのありがた~いお話
 




 文句を言っていたわりに、今日も千紘は、最後の雑炊まで綺麗に食べてくれた。

 寝る前、ふと見ると、千紘は暗がりで窓の側にしゃがみ、ベランダのレモンを見つめている。

 ちょっと笑って、真昼は小声で言った。

「おやすみなさい、千紘さん」

 ……と、レモンの木。





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