千紘さんのありがた~いお話
「なにしてるんだ、こんなところで。
 またベランダの植物をふやそうと思ってるのか。

 ジャングルみたいにするなよ」
と手を離した千紘に訊かれる。

 よく見たら、いつものホームセンターの前だった。

「ああ、いえ」
と言いながら、なんでそんなこと言うんですか、と思っていた。

 もう引っ越すのなら、植物増やしてもしょうがないじゃないですか、と。

「千紘さん」

「なんだ」

「夕べの電話、大学からですか」

 違うと言って欲しいな、と思ったが、千紘は少し迷ったあとで、
「そうだ」
と言ってきた。

「帰ってこいと言われたんですか?」

「九月から、学園に行ける先生が見つかったんだそうだ。
 慣れない高校教師をやって疲れたろう。

 もう戻ってきても大丈夫だとねぎらわれた」

 ああ、やっぱり、と真昼はうなだれる。
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