千紘さんのありがた~いお話
 でも、楽しかったな、この四ヶ月、と思いながら、真昼は鍋を見つめて言った。

「なんでしょう。
 走馬灯のように思い出が回るのですが。

 私、死ぬんでしょうか」

「死ぬのなら、たぶん、暑くてだろう。
 というか、このままなら、心中だ」

 エアコン、強くしていいか、と言って、千紘がリモコンを取りに立ち上がる。

 その背を見ながら、真昼は言っていた。

「千紘さん、離婚してください」

 千紘が今度は、リモコンを落とした。

「このまま、私を此処に置いて帰ってください。
 私はこの無人島で、ひとりで魚でも釣って、千紘さんを思って暮らします」

 息を止めて、返事を待っていると、千紘が訊いてきた。

「……お前、今、何杯呑んだ?」
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