千紘さんのありがた~いお話
 


 なにかゆらゆら揺れてるなー。

 お姫様抱っこで、運ばれているようだ、と真昼は思う。

「……やっぱり、重いな」
と言う千紘の失敬なセリフもまた聞こえてきた。

 千紘は、よいしょ、と真昼をベッドに降ろし、そのまま行ってしまうのかと思ったら、側に腰かけたようだった。

 ベッドが(きし)む音がする。

 千紘が顔を覗き込んでいる気配がした。

 みっともない顔で寝てないかな? 私、と目が開けられないまま、不安に思っていると、千紘が囁くように言ってきた。

「おやすみ、真昼。
 今日も明日もあさっても。

 ……一年後も、きっと、ずっと一緒だ」

 千紘さんは、計算ができないのでしょうか。

 一年後は我々はもう夫婦ではありませんよ、と思いながら、泣きそうになる。

 悲しくてではない。

 千紘のそのやさしい口調が嬉しくて。
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