千紘さんのありがた~いお話
「お前、この先の人生、ずっと俺と過ごしていくんだろう?」

「いやー、それとこれとは別ですっ」
と言って、

「別なわけあるかっ」
と怒られた。

「だって、最初に、もてあそばれて捨てられると思ったせいで、後遺症が……」
と言うと、千紘は、真昼から片手を離し、右手で仏様のようなポーズをとった。

 夢でしていたのと同じポーズだ。

 予知夢だ……。

施無畏印(せむいいん)だ。
 仏が、人々に、怖くはない。心を開きなさい、と言っている印だ。

 さあ、怖くはない、真昼。
 俺に心を開くんだ」
と言う千紘が先生口調でなんだか怖い。

「……お父さんがこんな感じだから、学校の先生は嫌だったんですよね~、ほんとは。
 家でも先生っぽくて、上から目線だし」

「……置いて帰ろうか、真昼。
 この町に」
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