千紘さんのありがた~いお話
お客さんたちが帰ったあとも、真昼が後片付けを手伝っていると、一緒に片付けながら、千紘が言ってくる。
「しかし、百人一首を百一首あると思ってるような奴が、よく田所の勝負を受けたな。
田所、練習で結構、強かったんだぞ」
俺をゆずり渡してもよかったのか、と言われる。
「ほんとですね。
接戦でしたよ、盛り上がりましたが……。
愁子ちゃん、子ども向けの百人一首が効いたんでしょうかね」
と言ったとき、龍平が、生徒会長として挨拶に来た。
「ありがとうございました。
お世話になりました、先生」
と頭を下げたあとで、
「先生、大学に戻られるそうですね」
と言ってきた。
「聞いたのか」
はい、他の先生から、と言う。
「短い間だったが、世話になったな」