千紘さんのありがた~いお話
 



 お客さんたちが帰ったあとも、真昼が後片付けを手伝っていると、一緒に片付けながら、千紘が言ってくる。

「しかし、百人一首を百一首あると思ってるような奴が、よく田所の勝負を受けたな。
 田所、練習で結構、強かったんだぞ」

 俺をゆずり渡してもよかったのか、と言われる。

「ほんとですね。
 接戦でしたよ、盛り上がりましたが……。

 愁子ちゃん、子ども向けの百人一首が効いたんでしょうかね」
と言ったとき、龍平が、生徒会長として挨拶に来た。

「ありがとうございました。
 お世話になりました、先生」
と頭を下げたあとで、

「先生、大学に戻られるそうですね」
と言ってきた。

「聞いたのか」

 はい、他の先生から、と言う。

「短い間だったが、世話になったな」
< 420 / 429 >

この作品をシェア

pagetop