極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
若頭と卵サンド
◇◇◇

暑さ厳しい八月中旬。

クーラーの利いた店内に流れるのは、昭和の歌謡曲とコーヒーの香り。

ここは東京の下町にある、ロイヤルという名の古めかしい喫茶店である。


十坪の狭い店内は、ガラス扉を入った正面に椅子が五つのカウンター席があり、窓際には四人用のテーブル席が三つ。

テーブル席は色褪せたえんじ色のビロード張りのソファで、カウンターは籐の椅子。

天井からチューリップ傘の電球が下がり、アーチ形の三連の窓には、裾が波形のレースのカーテンがかけられている。


経営者は、昭和レトロな風情に似合いの六十代後半の夫婦。

常連客にマスターと呼ばれている穏やかな性格の主人と、洋子(ようこ)という名の明るい奥さんだ。

ごま塩頭で中肉中背、バリスタエプロンをしめたマスターが、カウンター裏から呼びかけた。


実乃里(みのり)ちゃん、これ、二番テーブルのコーヒーふたつね」


続いて、ふっくらとした体形で、耳下までの髪にきつめのパーマをかけた洋子が、カウンター奥の暖簾の下がったドア口から顔を出す。


「実乃里ちゃん、こっちもね。モーニングセットとミックスサンド」


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