極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
神妙な面持ちの実乃里が、卵サンドを食べる龍司を思い浮かべていたら、煙草の火を消した杉谷が話を締めくくる。


「だからな、お嬢ちゃんが誰かに話してしまうと困るんだ。正体がバレたとしても龍司なら、やられずに逃げ出せるとは思うが、五年の苦労が水の泡だ。俺の役に立てなかったと落ち込むだろうな。あいつの生きる目的を奪わないでくれよ」


杉谷の役に……という言い方は嫌いだが、潜入捜査に関して他言しないという約束はしようと、実乃里は思っている。

もし猿亘組の者に知られてしまったら、ただでは済まないだろう。

龍司の命に関わる、重大な秘密である。

どこから情報が漏れるかわからないので、マスターや町の人たちにも教えてはならない。


「誰にも言わないと誓います」と実乃里が約束すれば、杉谷は「いい子だ」と満足げに頷いて口角を上げた。

だが、念には念を入れてということなのか、「あいつの仕事の邪魔もしてくれるなよ」と注意を付け足される。


(子供扱いされてる? 人の仕事の邪魔なんて、したことがないのに……)


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