極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
小さくため息をついた龍司は、手を伸ばして紙袋を受け取ってくれた。

それは、卵サンドなら食べたいと思ったからなのか、それとも、そうしないと実乃里が帰らないと思ったせいなのかはわからない。

「用もないのに事務所に来るな」と注意する龍司に、実乃里は笑顔で言い返す。


「龍司さんに会うという用があります。礼服姿、素敵ですね。好きです。連絡先を教えてくだーー」

「断る」


皆まで言わないうちに拒否されて、実乃里が少しだけショックを受けていると、後ろに笑い声がした。

車庫に車をしまった一尾が実乃里の横に来て、肉厚の手で彼女の肩をポンポンと叩いてなおも笑う。


「ロイヤルの姉ちゃんは、根性あるな。ふられたの何度目だ?」

「六度目です。あれ……七度目かな?」

「懲りないな。俺はそういうの嫌いじゃねーよ。見た目がガキ臭いから好みじゃねーけど、男が欲しいなら俺が付き合ってやろうか」

「結構です。私は龍司さんが好きなんです」


一尾が実乃里にふられた形であるが、楽しそうにギャハハと笑っており、付き合ってやるというのは冗談なのだろう。

楽しげな一尾に真顔の龍司が、紙袋を差し出した。


「差し入れだそうだ。卵サンド以外は食っていいぞ」

「あざっす」


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