極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
階段を上って受け取った一尾は実乃里に振り向くと、「またふられに来いよ。差し入れ付きなら歓迎してやる」と言って玄関ドアを開け、中に消えていった。

卵サンド以外の差し入れを、一尾に全て食べられてしまいそうで、実乃里は頬を膨らませる。

からかわれたことと、“ガキ臭い”と言われたことも、面白くない理由であった。


「ガキじゃない。私は大人なのに……」

独り言の不満を呟いたら、次のステップに足をかけた龍司が実乃里を見ずに言う。


「ガキだろ」

「龍司さんまでそんなーー」

「三十五の俺からしたら、お前は子供だ。悪いが俺は忙しい。色恋事は他に当たってくれ」

「龍司さん、待っ……行っちゃった」


龍司は事務所内に入り、玄関のドアを無情に閉められてしまった。

今回もうまくいかなかったと残念に思いつつ、実乃里は心の中で文句を言う。


(恋愛対象外ってひどい。年齢差は頑張ったってどうにもならないじゃない)


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