極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
それから一週間ほどが経ち、ロイヤルでの仕事を終えた実乃里はスナック深雪で働いている。

店内は二十畳ほどの広さで、四席のカウンターテーブルと、六人掛けのボックス席がふたつ、それと十人ほどが座れそうな広いテーブル席がある。

中央の壁際にはカラオケが設置されており、ダブルのウィスキー二杯で赤ら顔をした中年サラリーマンが気持ちよさそうに歌っていた。


実乃里の外見は、ロイヤルで働いている時とは別人のようである。

袖口と裾にヒラヒラと飾りのあるドレッシーな赤いワンピースを身に纏い、いつもは結わえている黒髪を下ろしてヘアアイロンで縦巻きにカールをつけている。


耳に金のイヤリングと、首にはパールのネックレス。

それらは全て深雪ママに借りたもので、若い頃に着ていたというワンピースはVネックの切れ込みが深く、実乃里のやや控えめなバストサイズではうまく着こなせなかった。

それでブラの中に三枚もパッドを詰めており、事情を話さなければ豊満に思われることだろう。


メイクも深雪ママに手取り足取り教えてもらい、アイラインに付け睫毛、アイシャドーにチークにリップグロスと、普段は使わない化粧品を塗りたくっているため華やかだ。

童顔な実乃里でも濃いめに化粧をすれば、年相応の色気は出せるようである。


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