極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
他にも深雪ママには色々と教わった。

左の耳に髪をかける際には右手で、右側にあるグラスや灰皿を取るのは左手で、というように、クロスの法則というものがあるらしい。

そうすると動きに曲線が生まれ、女性らしい色っぽい仕草に見えるそうだ。

話し方や目線、さりげないボディタッチなど、男性を気持ちよく酔わせて店に金を落とさせる技も教わった。

もちろん、水割りの作り方も。


なんとか合格点をもらった実乃里はバイト三日目から接客につき、今はボックス席で中年サラリーマンふたり組を、もうひとりのホステスと一緒にもてなしている。

右隣に座っている客の仕事上の苦労話を聞いて同情の態度を示し、職場で戦う男性は素敵だと実乃里が褒めれば、客は素直に喜んでくれた。


「いい子が入ったなぁ。若くてピチピチして肌が水を弾きそうだ。おじさん調子に乗っちゃおうかな。大きなおっぱい、触っていい?」

「絶対に嫌……じゃなくて、もう〜お触りしたら深雪ママに言いつけて追い出しちゃいますよ。ウフフ」


(どうして男性は、お酒が入るといやらしいことを言ってくるんだろう。昨日はロイヤルの常連さんも来てたけど、喫茶店では普通なのに、ここだとベタベタしてきたし……)


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