極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
「龍司さんの接客、私にさせてください」


深雪ママの手を取り、目を輝かせてお願いすれば、「もちろんよ」と快く許可してもらえる。


「実乃里ちゃんがうちの店で働いていること、龍司さんにはまだ伏せておくように旦那に言っておいたわ。きっと驚くわよ。いい女になったところを、見てもらわないとね」

「はい!」


それから四十分ほどが経ち、時刻は二十二時十分となる。

店内の客は十五人となかなかに盛況だが、ボックス席のひとつはリザーブの札を置いている。

もちろん龍司のための予約席だ。


(まだかな……)


満席のカウンターで常連客の相手を深雪ママとふたりでこなしつつ、実乃里はそわそわと落ち着かない。

深雪ママも気にしているようで、「遅いわね」と呟いたら、ドアが開けられた。

「来たわよ、隠れて」と深雪ママに楽しげに指示され、実乃里は急いでカウンター裏にしゃがみ込む。

緊張と嬉しさで鼓動が速まり、手が汗ばんでいた。


「いらっしゃい、龍司さん。お久しぶりね。あなた、ボックス席を取っておいたわ。龍司さんをご案内して」

「深雪、俺も客として来てるんだよ。若頭にだけじゃなく、俺にもサービスしてくれよ」

「水割りを一杯だけご馳走してあげるわ。手の早いあなたに、女の子は付けないわよ」


< 117 / 213 >

この作品をシェア

pagetop