極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
「若頭、すみませんね。深雪が協力しろって言うもんだから、ちょいとはめさせてもらいました。この子、若頭のためにお色気修業中らしいですよ。なかなか美人に見えますけど、どうです?」

「なるほどな」


実乃里がスナックで働き始めた理由を理解した龍司は、呆れたようなため息をつく。

その視線は、彼女の髪や顔、胸元からさらに下へと観察するように流された。

まるで合否の結果を待つ受験生のように、鼓動を速めつつ、実乃里は龍司の評価を待つ。


(子供っぽさは消せたと思うんだけど、龍司さんの目にはどう映っているのかな……)


龍司が首を縦に二回振った。

「見事な変身ぶりだ」と認めてくれて、実乃里は思わず手を握りしめ、「ヤッタ!」と子供っぽい喜び方をしてしまう。

その後には慌てて「ウフフ」と作り笑いをし、テーブル上の水割りのグラスを艶めかしい手つきで龍司に差し出した。


(せっかく褒めてくれたのに、ボロを出してはいけない。教わった技で、色っぽいと思わせなくちゃ……)


お尻の位置を少しずらして彼の方に体を向けた実乃里は、寄せて上げた胸の谷間をさりげなく見せつける。

上目遣いで精一杯の色気のある笑みを浮かべ、誘うように声をかけた。


「ロイヤルの私は忘れてくださいね。今夜は楽しい時間を過ごしましょう」


すると龍司が、片手で口元を覆って吹き出した。

堪えきれない、というような笑い方である。


(龍司さんが、笑ってる……)


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