極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
雨の夜、シーツに爪を立てる
◇◇◇

十一月も半ばになると、風の冷たさにコートの襟を立てたくなる。

実乃里がスナックのバイトを辞めてから、半月ほどが経つ。


龍司が、卵サンドの似合う女の方が好みだと言ってくれたお陰で、実乃里は無理することなくロイヤルの仕事だけを続けている。

龍司との関係はなんら進展することなく、告白してはふられることが、もはや挨拶のようになっていた。


それでも実乃里は諦めず、今日もこうして卵サンドやピザなどを差し入れに、組事務所に向かっている。

龍司は連絡先を教えてくれないので、会えるかどうかは行ってみなければわからない。


時刻は十五時四十五分。

西の空が早くも茜色を帯びていた。

事務所の玄関前に着いた実乃里は、胸を高鳴らせて呼び鈴を鳴らす。

するとインターホンから「おう、そろそろ来るんじゃねーかと思って待ってたぞ」と一尾の声がして、その後にドアが開けられた。


「こんにちは。龍司さんいますか?」

期待して問いかけた実乃里に、一尾は長袖Tシャツ姿の肥えた腹を揺すって笑う。


「残念だったな。今日もまだ帰ってねーよ」

「そうですか……」


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