極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
アルバイトとふたりでの営業ができる程度の小さな店を考えているので、準備金は一千万もいらないだろう。

いや、それよりも、斑目に出資してもらうなどと、裏がありそうで怖いことだ。

売上のほとんどを持っていかれるか、それとも後になってから、あれは貸しだったと言われ、借金地獄に落とされるかもしれない。


「あの、せっかくのお申し出ですが、自分の力のみでオープンさせたいので……」


実乃里が怖々と断れば、右肩にのせられている斑目の腕に力が加わった。

ずっしりとした加重で実乃里の体が右に傾き、慌てて肘掛を掴んで持ちこたえる。


「俺が金を出してやったら、得して損を取る結果になると思ったのか?そんな悪党みたいな真似はしねぇよ」


斑目は実乃里が心の中で危ぶんだことを、低く笑って否定した。

その代わりに、「取引だ」と生温かい息を吹きかけてくる。


「龍司を探ってくれねぇか。あんたなら、あいつも警戒しねぇだろ」


斑目は龍司が猿亘組にとって……いや、自分にとって不都合な企てをしていると危ぶんでいるのかもしれない。

五年も素性を隠して極道を続けてきた龍司なのだから、斑目が調べてもはっきりとした怪しい証拠は得られなかったのだろう。

それで実乃里を使おうというのだ。

人畜無害そうな小娘なら、龍司は油断してボロを出すかもしれないと考えているようだ。


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