極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
そんな取引には応じられない実乃里だが、右横から巨大で邪悪なプレッシャーを感じて、すぐに断ることができないでいる。

ゴクリと喉を鳴らした実乃里は、震える声で問う。


「もし、私がお断りしたら、どうなるのでしょう……?」

「なぁに、大したことにはならねぇよ。勤め先が、どぎついピンクのネオンが輝く夜の街に変わるだけだ。ガキくさい女でも需要があるから安心しろ」

(安心どころか、恐怖しかないんですけど……)


助けを求めて一尾たちを見れば、テーブル周囲に立ったままの彼らに目を逸らされてしまった。

三人とも、斑目に意見する勇気はないようだ。

取引には応じられないが、風俗店にも売られたくないと実乃里は恐怖し、返事ができずに固まるのみ。


その時、コンコンとノックの音が響いた。

ハッとして首を捻って後ろを見れば、龍司が開けっ放しであったドアに背を預けて、斑目を睨んでいる。

いつからそこにいたのか、実乃里は少しも気配に気づけなかったが、斑目が持ちかけた取引内容について、聞いていたような雰囲気であった。


実乃里の肩からやっと斑目の腕が外された。

龍司に聞かれていても、斑目は余裕の態度で煙草を取り出し、口にくわえる。

その煙草に三村が急いで火を点け、嫌な匂いのする紫煙が、侵食するように辺りに広がった。


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