極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
実乃里の胸は震え、頬に涙が伝う。
嫌われていなかったという安心と、ロイヤルに行くという約束、それと実乃里の料理が口に合うと言ってくれた喜びが混ざり合った、温かい涙である。
「泣くな」とぶっきら棒な言い方で慰める龍司は、少しだけ困り顔である。
実乃里の頭を片手で引き寄せると、黒いジャケットの胸に彼女の泣き顔を押し当てた。
誰かが吸った煙草の匂いが微かにするジャケットは、衣類越しでも逞しい筋肉の弾力を伝えてきて、実乃里は胸を高鳴らせる。
「あいにく、ハンカチは持ってないんだ」
言い訳のような呟きがボソリと耳元で聞こえ、実乃里は泣きながらもクスクスと笑う。
「持ってなくてよかったです。こっちの方が嬉しいですから」
「ったく、困った女だ。俺に惚れたって、なにもしてやれないぞ。早く諦めてくれ」
「それは無理です」
(かっこよくて、ちょっと危険で、強くて優しいなんて、惚れずにはいられないよ……)
日が暮れかけて、空は橙と紫の二色の層を成している。
どさくさに紛れて龍司の体に腕を回して抱きつきながら、実乃里はひと時の幸せを味わっていた。
嫌われていなかったという安心と、ロイヤルに行くという約束、それと実乃里の料理が口に合うと言ってくれた喜びが混ざり合った、温かい涙である。
「泣くな」とぶっきら棒な言い方で慰める龍司は、少しだけ困り顔である。
実乃里の頭を片手で引き寄せると、黒いジャケットの胸に彼女の泣き顔を押し当てた。
誰かが吸った煙草の匂いが微かにするジャケットは、衣類越しでも逞しい筋肉の弾力を伝えてきて、実乃里は胸を高鳴らせる。
「あいにく、ハンカチは持ってないんだ」
言い訳のような呟きがボソリと耳元で聞こえ、実乃里は泣きながらもクスクスと笑う。
「持ってなくてよかったです。こっちの方が嬉しいですから」
「ったく、困った女だ。俺に惚れたって、なにもしてやれないぞ。早く諦めてくれ」
「それは無理です」
(かっこよくて、ちょっと危険で、強くて優しいなんて、惚れずにはいられないよ……)
日が暮れかけて、空は橙と紫の二色の層を成している。
どさくさに紛れて龍司の体に腕を回して抱きつきながら、実乃里はひと時の幸せを味わっていた。