極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~

十二月に入り、外は木枯らしが吹いて寒々しい景色となった。

ロイヤルの店内に流れるのは相変わらず昭和の歌謡曲であるが、入口横に実乃里の背丈ほどのクリスマスツリーが飾られた。

新メニューとして、なんとなくクリスマスらしさのあるものも登場している。

グリルチキンとベイクドポテトのセットに、ミートパイ、星形のクッキーをのせたチョコレートケーキなどだ。


十九時の閉店時間となり、最後の客が帰っていくと、実乃里はガラス扉にクローズの札をかけた。


「お疲れ様です。マスターと洋子さんは、レジを閉めたら帰っていいですよ。あとの掃除は私がやりますので」


今日は土曜日である。

近所の常連客に支えられているロイヤルは、平日も土曜も、客層、客入りはあまり変わらない。

定休日は日曜で、土曜の夜のマスター夫妻はワインを飲みながら遅くまでテレビを見て、翌日は昼近くまでゆっくり寝ているらしい。

七十近い年齢のため、連日勤務の六日目ともなれば、かなりくたびれるようである。

それで実乃里は、ひとりで掃除を引き受け、マスターと洋子を早く帰らせようと思ったのだ。


(若い私だって疲れるんだから、マスターたちはしんどいよね。龍司さんのことだけじゃなく、それも辞めると言い出しにくい理由かも。夢の実現のためには、早く次の店に移るべきだとは思うんだけど…‥)


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