極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
「実乃里ちゃん、よろしくね」

マスター夫妻は実乃里の言葉に甘えることにし、後片づけを任せて帰っていく。

自宅は徒歩圏内にあるマンションだと以前聞いたが、具体的な場所まで、実乃里は知らない。

夫妻の自宅を訪ねる用事もないだろうし、聞こうとも思わなかった。


ひとりきりになった店内で、実乃里は有線放送のチャンネルを切り替える。

クリスマスソングが流れてきたので、それを聴きながら、客席とカウンターとトイレ掃除をし、少しだけ残っていた洗い物をする。

全て終えると時刻は二十時で、実乃里のお腹がグウと鳴った。


時間がある時には適当につまみながら働いているが、今日はスナック深雪と他に二軒からピザの配達の注文があり、忙しくしていたため午後は飲み物以外口にしていない。

(お腹空いたな。なにか作って食べようかな……)


材料費を払えば、なんでも自由に作っていいと言われている。

調理場の冷蔵庫を開けて物色し、ベーコンとチーズ、牛乳やレタスなどを取り出した。

冷凍庫にあったロールパンはトースターで温め、調理したベーコンとチーズ、レタスを挟む。

それと同時進行で作ったのは、クラムチャウダー。

トレーにのせて一番テーブルに運び、クリスマスツリーを見ながら、ひとりで夕食をとる。


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