極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
(あれ、シンプルで間違いようのない料理なのに、なぜか美味しくない……)


実乃里が首を傾げたのは、ロールパンのサンドイッチである。

原因はなんだろうと考えながら、もうひと口食べ、パンだと気づいた。

一度冷凍して焼き直したものだからかもしれないが、それにしてもふんわり感がなく、中がパサついている。

バターの風味も、もう少し効かせた方が美味しい気がした。


ロールパンは洋子が作ったものであり、焼き立てしか食べたことのなかった実乃里は、その時は美味しいと思って感想を伝えていた。

いつでも焼き立てを提供できるわけではないので、作り方を検討した方がいいだろう。


(パサつきはきっと、発酵時間が長過ぎたせいじゃないかな。そこを調整して、バターの量を増やしてみたいよね……)


思い立ったら、作らずにはいられない。

調理場に戻った実乃里は、早速ロールパン作りに取り掛かる。


材料を計量し、混ぜてこねて丸めてから、濡れ布巾をかけて一次発酵させる。

その時間は三十分ほど必要で、ただぼんやり待っているのも暇だからと思い、別のパンも作り始めた。

計量しては混ぜてこねて発酵させて、成形してからオーブンで焼いている間に、また違うパンを一から作り……。


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