極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
大きな紙袋に入れて持ち帰ったパンは、三十個ほど。
ビニール袋に個包装にしてきたので、その中からそのまま食べても美味しいシナモンロールと胡桃パン、メロンパンを差し出した。
「こんなにいいんですか?」と運転手は驚き喜んでくれて、実乃里も嬉しくなる。
「作りすぎて困ってたんです。できれば二十個ほどもらってほしいです」
「食いしん坊な私でも、そんなには食べられないなぁ」
和気あいあいと話して、十分ほどで自宅のあるアパート前に到着した。
込み入った庶民の住宅地は、人通りがなく、とても静かである。
タクシーのアイドリング音で、壁の薄いアパートの住人たちの眠りを妨げてはいけないと思った実乃里は、ハンドバッグから急いで財布を取り出した。
財布は、小銭を入れる部分がガマ口になっているタイプで、なぜか閉じられておらず、バッグから出した拍子に小銭をばら撒いてしまった。
「ああっ、ごめんなさい!」
焦りに加え、早朝から深夜までの労働の疲労から、実乃里の注意力は自分が思うより低下していた。
ハンドバッグや紙袋にも腕を引っ掛けて後部シートの下に落としてしまい、一層慌てている。
「お客さん、落ち着いて」と運転手に笑われて、実乃里の羞恥がさらに煽られた。
落としたものを拾い集めて、タクシー代を現金で払うと、財布はコートのポケットに突っ込む。
それから紙袋を掴み、逃げるようにタクシーを降りた。
「すみません、ありがとうございました!」
(そういえば前に、一尾さんにドジっ娘と言われたことがあったよね。そんなキャラじゃないのにと思ったけど、慌てるとミスを重ねてしまうみたい。気をつけないと……)
ビニール袋に個包装にしてきたので、その中からそのまま食べても美味しいシナモンロールと胡桃パン、メロンパンを差し出した。
「こんなにいいんですか?」と運転手は驚き喜んでくれて、実乃里も嬉しくなる。
「作りすぎて困ってたんです。できれば二十個ほどもらってほしいです」
「食いしん坊な私でも、そんなには食べられないなぁ」
和気あいあいと話して、十分ほどで自宅のあるアパート前に到着した。
込み入った庶民の住宅地は、人通りがなく、とても静かである。
タクシーのアイドリング音で、壁の薄いアパートの住人たちの眠りを妨げてはいけないと思った実乃里は、ハンドバッグから急いで財布を取り出した。
財布は、小銭を入れる部分がガマ口になっているタイプで、なぜか閉じられておらず、バッグから出した拍子に小銭をばら撒いてしまった。
「ああっ、ごめんなさい!」
焦りに加え、早朝から深夜までの労働の疲労から、実乃里の注意力は自分が思うより低下していた。
ハンドバッグや紙袋にも腕を引っ掛けて後部シートの下に落としてしまい、一層慌てている。
「お客さん、落ち着いて」と運転手に笑われて、実乃里の羞恥がさらに煽られた。
落としたものを拾い集めて、タクシー代を現金で払うと、財布はコートのポケットに突っ込む。
それから紙袋を掴み、逃げるようにタクシーを降りた。
「すみません、ありがとうございました!」
(そういえば前に、一尾さんにドジっ娘と言われたことがあったよね。そんなキャラじゃないのにと思ったけど、慌てるとミスを重ねてしまうみたい。気をつけないと……)