極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
実乃里が顔を熱くして、真面目にいかがわしい妄想をしているとは、運転中の龍司は気づいていないことだろう。
実乃里が黙ればそれ以上の会話はなく、車は雨の夜道を安全運転で走るのみであった。
龍司の自宅に着いたのは、それから十分ほど後のこと。
彼の住まいはオートロックと防犯カメラが設置され、警備会社のシールがエントランスに貼られたセキュリティーが高めの、十五階建てマンションである。
全室が賃貸で、間取りは1LDK。
造りはオーソドックスで、ごく普通のマンションだが、安アパート暮らしの実乃里の住環境に比べたら、遥かに上等である。
危険な任務に就いている龍司は、襲撃のリスクを少しでも減らすために毎年引越しをしているそうだ。
住まいというより、仮の拠点という感覚でいるのかもしれない。
「お邪魔します」と実乃里は玄関に上がり、短い廊下を進んでリビングに通される。
リビングは十二畳ほどの広さで、壁に向かって小さなキッチンがついている。
冷蔵庫に簡素な机、ベッド、テレビが置かれている他はなにもない。
廊下の右横にあった、もうひと部屋には、ダンボールに入ったままの私物や未処理の書類などがあるそうで、入るなと言われた。
リビングのドア口に突っ立ったままの実乃里が、随分と殺風景な部屋だと思っていたら、クローゼットを開けていた龍司が、バスタオルとハンドタオル、クリーニング屋のタグのついた黒いワイシャツを出して彼女に渡す。
「お前に貸せそうなものはそれしかない。不足があるだろうが、それでなんとかしろ。風呂場は出て右側。まずは温まってこい」
「はい、ありがとうございます……」
実乃里が黙ればそれ以上の会話はなく、車は雨の夜道を安全運転で走るのみであった。
龍司の自宅に着いたのは、それから十分ほど後のこと。
彼の住まいはオートロックと防犯カメラが設置され、警備会社のシールがエントランスに貼られたセキュリティーが高めの、十五階建てマンションである。
全室が賃貸で、間取りは1LDK。
造りはオーソドックスで、ごく普通のマンションだが、安アパート暮らしの実乃里の住環境に比べたら、遥かに上等である。
危険な任務に就いている龍司は、襲撃のリスクを少しでも減らすために毎年引越しをしているそうだ。
住まいというより、仮の拠点という感覚でいるのかもしれない。
「お邪魔します」と実乃里は玄関に上がり、短い廊下を進んでリビングに通される。
リビングは十二畳ほどの広さで、壁に向かって小さなキッチンがついている。
冷蔵庫に簡素な机、ベッド、テレビが置かれている他はなにもない。
廊下の右横にあった、もうひと部屋には、ダンボールに入ったままの私物や未処理の書類などがあるそうで、入るなと言われた。
リビングのドア口に突っ立ったままの実乃里が、随分と殺風景な部屋だと思っていたら、クローゼットを開けていた龍司が、バスタオルとハンドタオル、クリーニング屋のタグのついた黒いワイシャツを出して彼女に渡す。
「お前に貸せそうなものはそれしかない。不足があるだろうが、それでなんとかしろ。風呂場は出て右側。まずは温まってこい」
「はい、ありがとうございます……」