極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
この家の中には、彼と自分のふたりきりで、これからシャワーを浴びると思えば、“妙な期待”がまた膨れてしまう。

実乃里が目を合わせられずにいると、「どうした?」と訝しげに問われる。

「い、いえ、お風呂お借りします」と声を上擦らせながら、実乃里は逃げるようにリビングを出た。


バスルームは洗面脱衣室がついており、トイレは別。

洗濯機を置くスペースもあって、使い勝手がよさそうだ。

天井付近のハンガーパイプに、自分と龍司のコートを吊るしながら、実乃里の頭の中にはまだピンク色の妄想が繰り広げられている。


(シャワーを浴びる前からのぼせそう。心臓が持ちそうにないから、一旦忘れないと……)


そういう時には、夢である自分のカフェについて想像するのがいいだろう。

メニューや店のインテリアを考えることで、シャワーを浴びて出るまでには、無事に平常心を取り戻すことができた。


バスタオルで体を拭き、さて着替えを……と思った実乃里は、床にあるものに目を瞬かせた。

着替えとして借りた黒いワイシャツの横に、タオルでも入っていそうな厚みの薄い紙箱が置かれている。

実乃里のシャワー中に、使っていいという意味で龍司が置いてくれたのだと思われるが、タオルは足りている。

不思議に思いつつ蓋を開けた実乃里は、目を丸くした。

箱に綺麗に収められていたのは、タオルではなく、真新しい女性ものの下着であった。


(どうして龍司さんが、こんなものを持ってるの……?)


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