極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
少々硬めのマットと枕、薄手の羽毛布団を与えられた実乃里は、ベッドに横にならずに龍司の背中に話しかける。


「龍司さん、そこ、寒くないですか?」

「お前がエアコンを消させたんだろう」

「す、すみません。あのーー」

「俺のことは気にせず、早く寝ろ」


ぶっきらぼうな物言いで会話を終了させられても、実乃里は寝ようとしない。

鼓動はずっと、早鐘を打ち鳴らしている。

女は度胸だと自分に言い聞かせた実乃里は、着ているワイシャツのボタンを外すと、思い切ってそれを脱いだ。

龍司は背を向けているが、実乃里がゴソゴソとなにかをやっている物音は聞こえているはずだ。

下着姿になった実乃里は、恥ずかしさを必死に押し込め呼びかける。


「龍司さん、こっち向いてください」

「断る。なんか企んでるだろ」

「た、企んでなんか……なくはないですけど」


(わかってるなら、なにを考えているんだと聞いてくれたらいいのに……)

そうすれば、抱いてほしいと言えるかもしれないが、龍司はそこに触れてはくれない。


「龍司さん、少しだけ私を見てくれませんか?」

「妙な期待をするなと言ったろ。俺はお前に手を出さない」

「それじゃ困るんです。私は龍司さんと……もっと仲良くなりたいんです」


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