極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
やはり、抱いてくださいとは言えなかった実乃里だが、それでも精一杯の勇気で攻めているつもりである。

スタンドライトの明かりは、龍司の毛布の足元を照らしている。

毛布は少しも動かず、彼はひと言も返してくれない。


「無視しないでください……」


実乃里の泣きそうな呟きが、静かな部屋に響いた。

すると龍司のため息が聞こえ、彼が身を起こす。

振り向いて実乃里を視界に捉えても、彼が驚くことはない。

それは、下着姿でいるのだと予想していたからであろう。


龍司は毛布を落として立ち上がり、ベッドの実乃里の隣に腰を下ろした。

その距離はわずか数センチ。

自分から誘っておきながら、いざとなると動揺し、実乃里の心は大慌てである。


(そうだ、ここから先を考えていなかった。どうすればいいんだろう。洋画とかだと、キスして触って、下着も脱いで……え、私から!?)


実乃里が観たことのある映画やドラマの軽いベッドシーンでは、男性がイニシアチブを取って情事を進めていた。

けれども、その気のない龍司が相手では、実乃里が主導するしかないだろう。


下着姿を見られている恥ずかしさに加え、次にすべきことがわからず目を泳がせれば、顎をすくわれた。

絡み合う視線の先で、龍司がニヤリと彼らしくない笑い方をしている。


「似合うじゃないか。捨てずに取っておいて正解だったな。そそられる……」


甘く囁くようなその言葉までが、クールで硬派な彼のものとは思えず、実乃里は喜ぶよりも目を白黒させる。

さらにはペロリと下唇を湿らせた龍司が顔を近づけてきて、前置きの言葉もなく突然唇が触れ合った。


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