極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
思わず実乃里が片足を引くと、彼はピザの箱に気づいたようで、「ああ、そうか」と独り言のように呟く。
それから表情の険しさを解いて、「こっちだ」と左の方へ歩きだした。
「それを注文したのは、事務所にいる若い奴らだろう。ついてこい」
「はい……」
よくわからないが、実乃里は言われるがままに後に続く。
大邸宅の隣には、社屋のようなコンクリート壁の三階建ての建物がある。
門はなく、一階部分は車庫になっており、コンクリートの階段を上った先の玄関は建物の中央だ。
重そうな金属製の片開きのドアの横に、社名のついた看板がかけられている。
そこには“猿亘興行”と書かれていた。
よく見れば番地のプレートも、マスターから指示された住所と一致しており、実乃里は正しい配達先へ案内してもらえたようである。
(怖いと思っちゃったけど、目つきが鋭いだけで、きっといい人だよね。間違いを教えてくれたんだもの。そういえばこの建物を“事務所”と呼んでいたけど、もしかして龍司さんの勤める会社なのかな……?)
マスターから龍司に関する情報を聞き出した時、近くにある事務所がどうのと言っていた覚えがある。
そのことから実乃里は、彼が猿亘興行の社員なのではないかと推察していた。
それから表情の険しさを解いて、「こっちだ」と左の方へ歩きだした。
「それを注文したのは、事務所にいる若い奴らだろう。ついてこい」
「はい……」
よくわからないが、実乃里は言われるがままに後に続く。
大邸宅の隣には、社屋のようなコンクリート壁の三階建ての建物がある。
門はなく、一階部分は車庫になっており、コンクリートの階段を上った先の玄関は建物の中央だ。
重そうな金属製の片開きのドアの横に、社名のついた看板がかけられている。
そこには“猿亘興行”と書かれていた。
よく見れば番地のプレートも、マスターから指示された住所と一致しており、実乃里は正しい配達先へ案内してもらえたようである。
(怖いと思っちゃったけど、目つきが鋭いだけで、きっといい人だよね。間違いを教えてくれたんだもの。そういえばこの建物を“事務所”と呼んでいたけど、もしかして龍司さんの勤める会社なのかな……?)
マスターから龍司に関する情報を聞き出した時、近くにある事務所がどうのと言っていた覚えがある。
そのことから実乃里は、彼が猿亘興行の社員なのではないかと推察していた。