極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
それから数分が経ち、時刻は八時十分になる。

モーニングは八時三十分までで、あと五分すればラストオーダーだ。

龍司は来られなくなったのだろうかと実乃里が時間を気にしていたら、待ちかねていた彼が来店した。

黒いコート姿の彼は、今日も精悍で大人の色気を纏っている。


「いらっしゃいませ。龍司さん、お待ちしてました」


満面の笑みで声を弾ませる実乃里に、「ああ」と素っ気ないひと言を返すのは、彼の常である。

龍司は入口横のマガジンラックから新聞を取り、深雪ママが立った後のカウンター席に腰を下ろした。


注文は聞かずともわかるので、実乃里は「ブレンドコーヒーひとつ」とマスターに伝えた後、調理場に入る。

洋子に客対応をお願いし、龍司のための卵サンドを張り切って作り始めた。


ゆで卵を潰して、フライドオニオンの粉末やパセリのみじん切り、粉チーズ少々と手作りマヨネーズで味付けし、サンドイッチ用のパンに挟んでカットする。

職人技と呼びたくなるような正確で素早い手つきで、龍司用の特製卵サンドはあっという間に完成した。

それを美しく皿に盛り付けて調理場を出ると、龍司の前に出す。


「お待たせしました。卵サンドです」


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