極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
ちょうどいいタイミングで、ブレンドコーヒーもカウンター裏から出された。
「ごゆっくりどうぞ」と、マスターが龍司に好意的な笑みを向ける。
龍司は新聞を読みながら、コーヒーを飲んで卵サンドを食べる。
それは当たり前のように、いつもと変わらぬ光景で、実乃里にとって穏やかな幸せを感じる時間であった。
(龍司さんの食べる姿を見ていたい。ずっとこの時間が続けばいいのに……)
残念ながら鳩時計は八時三十分を指し、ゆっくりしていた常連客たちが会計を済ませ、マスターに声をかけて帰っていく。
最後に龍司が新聞を畳んでカウンターに置き、席を立った。
レジ前の実乃里に近づいた彼は、コートの内ポケットから財布を出して、「ご馳走さん。うまかった」と声をかけた。
「え……?」
実乃里が問い返してしまったのは、帰り際の彼に、卵サンドの感想を言われるのが初めてだったからである。
無口な彼なので、大抵はなにも言わずに帰ろうとし、実乃里が引き止めて次の来店予定を尋ねるのがいつものパターンだ。
「ごゆっくりどうぞ」と、マスターが龍司に好意的な笑みを向ける。
龍司は新聞を読みながら、コーヒーを飲んで卵サンドを食べる。
それは当たり前のように、いつもと変わらぬ光景で、実乃里にとって穏やかな幸せを感じる時間であった。
(龍司さんの食べる姿を見ていたい。ずっとこの時間が続けばいいのに……)
残念ながら鳩時計は八時三十分を指し、ゆっくりしていた常連客たちが会計を済ませ、マスターに声をかけて帰っていく。
最後に龍司が新聞を畳んでカウンターに置き、席を立った。
レジ前の実乃里に近づいた彼は、コートの内ポケットから財布を出して、「ご馳走さん。うまかった」と声をかけた。
「え……?」
実乃里が問い返してしまったのは、帰り際の彼に、卵サンドの感想を言われるのが初めてだったからである。
無口な彼なので、大抵はなにも言わずに帰ろうとし、実乃里が引き止めて次の来店予定を尋ねるのがいつものパターンだ。