極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
体を重ねた後でも龍司は連絡先を教えてくれず、事務所にも来るなと言われているので、次回の約束がないと待つのがつらい。

実乃里に横顔を見せた彼は、目を合わせずに「そのうちな」と曖昧な返事をした。

ドアノブを押して出ていく龍司に、マスターは「またお越しください」と普通に声をかけているが、実乃里はなにか胸騒ぎのようなものを感じ、焦って彼の後を追った。


「龍司さん、待ってください!」


隣の店の前を歩いていた彼は、一応足を止めて振り向いてくれたが、困ったように眉を寄せている。


「どうした?」

「あ、あの、ええと……」


駆け寄って引き止めたはいいが、漠然とした不安をなんと言葉にしていいのか、実乃里はわからない。

取りあえず会話を繋げることだけを目的に、「私と付き合ってください」と二十数回目の告白をした。


『断る』と即答されるかと思っていたのに、ここでも龍司は今までと違う言動をとる。

「懲りない女だ」と微笑んで、実乃里を片腕で抱き寄せると、額にキスをくれたのだ。


目を丸くして驚き、実乃里は胸を高鳴らせる。

ついに告白に応えてくれたのかと期待しかけたが、残念ながら違うようだ。

すぐに体は離され、話を逸らされる。


「実乃里、夢を叶えろよ」

「え? は、はい」


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