極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
一尾たちのことも気掛かりだが、それよりもなによりも龍司はどうしているのかと、実乃里はウロウロして彼の姿を探していた。


(龍司さんも、この騒ぎの中にいるのかな。いるとしたら、警察側なのか組側なのか、どっち……?)


龍司は潜入捜査官だが、この先もまだ任務が続くのなら、若頭として振舞っているはずである。

実乃里は、それを期待していた。

連絡先も聞き出していないのに、今、任務を終了されては会えなくなると思うからだ。


壁のように実乃里の前に立ちはだかる、報道関係者たち。

もっと近づいて状況を確かめたい実乃里は、人垣の間に小柄な体を潜り込ませようとする。


「下がって! 危ないから下がって!」

警備役の警察官が両手を広げて中継クルーたちに迫るから、実乃里は押されて、尻餅をついてしまう。

テレビカメラを構えた大柄な男性に踏まれそうになったら、誰かが実乃里の腕を引っ張り、ずりずりと引きずり出してくれた。

「実乃里ちゃん、危ないことしないでよ」と怒り顔で注意したのはマスターで、どうやらロイヤルを飛び出した実乃里を追いかけてくれたようだ。


「すみません……」


龍司のことが気になって仕方ない実乃里だが、マスターに連れ帰られてしまう。

ロイヤルに入ると、カウンターテーブルには小型テレビが置かれていた。

普段からカウンター裏にテレビがあるのを実乃里は知っていたが、使用されているところを見るのはこれが初めてである。


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