極艶恋～若頭は一途な愛を貫く～
座席は、ふたり掛けのテーブル席が三つと、壁に向けて設置したカウンター席が四つ。

奥は調理スペースで、ケーキやパンを並べたショーケースとレジカウンターが、客席との間仕切りになっている。

客は注文と支払いをしてから店内で飲食をするか、持ち帰るスタイルである。


（性別、年齢問わずくつろげるような雰囲気にして、インテリアも趣味がいいと思うんだけどな。メニューが問題？）


サンドイッチ、ラップサンド、ワッフルや手作りパンを日替わりで数種類ほど用意している。

スイーツは常時十種類ほど並べているが、今のところ売れているのは、ほとんどがパンケーキだ。

コーヒーは専門店で買い付けた豆を店内で挽き、エアロプレスで抽出している。

それは北欧を中心に新しく広まっている淹れ方で、空気圧で短時間に抽出できるのがメリットだ。

香り高く、まろやかで雑味も少ない、すっきりした味わいが楽しめる。

紅茶が数種類とカフェオレ、豆乳ラテ、抹茶ラテ、スムージーやタピオカミルクティーもドリンクメニューにあり、近隣のカフェに比べて比較的リーズナブルに価格設定していた。


（味には自信があるし、試食してもらった友人たちだって太鼓判を押してくれたのに。やっぱり宣伝と立地、それが問題かな……）


ここは駅から徒歩十五分ほどの場所で、片道二車線の道路沿いには、一階にブティックや雑貨店、美容室などが入るマンションが建ち並んでいる。

買い物客とマンション住まいの主婦やOLをメインの客層として考えていたのだが、平日は一日に十人来ればいい方である。

もっと駅に近い場所に出店すればよかったと、実乃里は後悔していた。

駅前だと店舗の賃貸料が高くて躊躇してしまったけれど、今より遥かに客を呼び込めたはずである。


（銀行から受けた融資の月々の返済額、もう少し下げられないか相談に行こうかな。今日作ったパンやケーキも、大量に廃棄することになるんだろうね。本気でどうにかしないと……）


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