極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
大きなショックを受けた実乃里は、作り笑顔を引きつらせる。

龍司はドア口に実乃里を残して部屋に入り、窓際の事務机の椅子に腰を下ろした。

マウス片手にパソコン画面を見ており、そこだけ切り取れば普通の会社のように見えなくもない。

しかしこの室内の様相は、それとは全く違うもの。


広さは十五畳ほどで、事務机は龍司が使用しているものだけだ。

黒い革張りのソファセットが部屋の大部分を占めており、大型テレビもある。

壁際には、簡易キッチンと冷蔵庫とコーヒーマシーン。

その他にはゲーム機や音楽プレーヤー、漫画雑誌が無造作に置かれており、熱帯魚が泳ぐ水槽もある。

どこかの家のリビングのような部屋には、強面の男性たちが龍司を含めて五人いた。


ひとりがけのソファにゆったりと腰掛けている男性は、足を組んで偉そうな態度でスマホを操作している。

龍司より年上の四十代前半くらいに見え、短く刈り込んだ髪、白いスラックスと白い革靴、金ピカの高級腕時計が目立っていた。

下っ端には見えないが、若頭の龍司の部下的存在なのだろうか……判断しかねるところだ。


他のふたりは、今、実乃里からピザの箱を受け取っている小太りの若者と、体型は違えど雰囲気が似たり寄ったりの印象だ。

彼らは間違いなく下っ端の構成員だろう。


< 19 / 213 >

この作品をシェア

pagetop