極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
ADが出ていってから十五分ほどして、ロケ隊が現れ、そこからの実乃里は大忙しである。

テレビカメラを向けられることは初体験であり、とても緊張する。

芸能人が目の前にいて、自分に話しかけてくることも、心拍数が上がる原因だ。

それでも店を宣伝するべく、舞い上がらないように気をつけて、実乃里は一生懸命に対応する。


番組出演者は四人いて、ふたりは三十代前半の男性芸人。

バラエティー番組でよく見かける、東京出身のコンビである。

彼らは「店長さんが美人!」としきりに褒めてくれて、実乃里は戸惑う。


二十六になっても童顔はそのままだ。

これまで可愛いと評価されることはあっても、美人と言われたことはない。

大人扱いに喜ぶべきかもしれないが、今は宣伝に必死なので、そんなことよりメニューを紹介してほしいという気持ちでいた。


あとのふたりの出演者は、番組の司会アシスタントの女子アナウンサーと、刑事ドラマの番宣目的でロケに参加している東島という人気俳優だ。

東島は三十代後半で、クールでワイルドな雰囲気を持つ。

今日はドラマの役柄そのままに、ダークスーツを着ており、惚れ惚れするほど精悍であった。

東島を見た実乃里は、すぐに龍司を思い出してしまう。


(龍司さんと印象が少し似ている。刑事ドラマの番宣と言ってたよね。それも龍司さんと重ねてしまう原因かな……)


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