極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
ピザの箱はガラスの天板のローテーブルに置かれ、すぐに蓋が開けられた。
「おっ、うまそう!」と下っ端のひとりが言い、三人の手が伸ばされる。
若いヤクザたちはピザを囲み、立ったままでがっつくように食べ始めた。
高級腕時計の男は、下っ端たちにも実乃里にも無関心で、舌打ちしながらスマホをいじるのみである。
(まだ、お代をもらっていないんだけど……)
極道という集団は怖いものだと、実乃里は認識している。
帰るに帰れず、声もかけられずにドア口に佇んでいたら、スマホの着信音が鳴り響いた。
それは小太りの下っ端構成員のもので、彼は口をモグモグさせつつ、ポケットからスマホを出して電話に出た。
「あーい、誰? ああ、二丁目のゲーセンのおやっさんね。この前はどうも。それでどうしたんすか?」
呑気な調子であった声が急に低くなり、「すぐ行く」と言って彼は電話を終えた。
「どうした?」
それまで手の中のスマホにしか興味を示さなかった高級腕時計の男が、凄みを感じさせる声で問う。
下っ端の極道が、食べかけのピザを投げ捨てるように箱に戻して説明したのは、ここからほど近いゲームセンターに、暴力的な客が現れたという話であった。
いや、この時間はまだ、客と呼べないだろう。
そのゲームセンターには行ったことのない実乃里だが、経営者の五十代の男性を知っている。
これまでに二回、ロイヤルで接客したことがあったからだ。
「おっ、うまそう!」と下っ端のひとりが言い、三人の手が伸ばされる。
若いヤクザたちはピザを囲み、立ったままでがっつくように食べ始めた。
高級腕時計の男は、下っ端たちにも実乃里にも無関心で、舌打ちしながらスマホをいじるのみである。
(まだ、お代をもらっていないんだけど……)
極道という集団は怖いものだと、実乃里は認識している。
帰るに帰れず、声もかけられずにドア口に佇んでいたら、スマホの着信音が鳴り響いた。
それは小太りの下っ端構成員のもので、彼は口をモグモグさせつつ、ポケットからスマホを出して電話に出た。
「あーい、誰? ああ、二丁目のゲーセンのおやっさんね。この前はどうも。それでどうしたんすか?」
呑気な調子であった声が急に低くなり、「すぐ行く」と言って彼は電話を終えた。
「どうした?」
それまで手の中のスマホにしか興味を示さなかった高級腕時計の男が、凄みを感じさせる声で問う。
下っ端の極道が、食べかけのピザを投げ捨てるように箱に戻して説明したのは、ここからほど近いゲームセンターに、暴力的な客が現れたという話であった。
いや、この時間はまだ、客と呼べないだろう。
そのゲームセンターには行ったことのない実乃里だが、経営者の五十代の男性を知っている。
これまでに二回、ロイヤルで接客したことがあったからだ。