極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
どうやら実乃里の存在は、完全に忘れられていたらしい。
二歩の距離で足を止めた彼に、「まだいたのか?」と呆れ顔で問われ、実乃里はやっと「お代を……」と請求することができた。
「一尾、この子に早く払ってやれ」
「は、はい。すみません」
一尾と呼ばれた小太りの下っ端は、「姉ちゃん、ごめんな」と実乃里にも謝ってくれて、ハーフパンツのポケットから財布を取り出している。
斑目本部長は、息の根を止めてしまいそうな視線を龍司の背に送り続けているが、口を開くことはない。
龍司は大きな手を実乃里の肩に置いて軽く押し、道を開けさせると、足早に玄関へ向かって、その黒い後ろ姿はすぐに見えなくなった。
(ここで喧嘩沙汰にならなくてよかった……)
実乃里はいくらかホッとして、ピザ代の支払いを受けているが、なにかを蹴飛ばした音が聞こえてビクリと肩を揺らした。
斑目本部長が他の下っ端ヤクザに向け、「おい、二山!」と声を荒げている。
土地買収の件がどうのと話しだし、顧問弁護士と連絡がついたのかと腹立たしげに確認していた。
「まだなんです。留守電にメッセージは入れたんすけど……と、この説明、さっきしたばかりですよね。すいやせん」
「てめぇ、この野郎。この俺が朝っぱらから来てやってるっていうのに、なんで弁護士の方が後なんだ。早く連れてこいや!」
「す、すいやせん。もうすぐ折り返しの電話がくると思うんで、もう少し待ってください。ピザでもいかがですか?」
「いらねーよ。ったく、どいつもこいつも俺をイラつかせやがって」
二歩の距離で足を止めた彼に、「まだいたのか?」と呆れ顔で問われ、実乃里はやっと「お代を……」と請求することができた。
「一尾、この子に早く払ってやれ」
「は、はい。すみません」
一尾と呼ばれた小太りの下っ端は、「姉ちゃん、ごめんな」と実乃里にも謝ってくれて、ハーフパンツのポケットから財布を取り出している。
斑目本部長は、息の根を止めてしまいそうな視線を龍司の背に送り続けているが、口を開くことはない。
龍司は大きな手を実乃里の肩に置いて軽く押し、道を開けさせると、足早に玄関へ向かって、その黒い後ろ姿はすぐに見えなくなった。
(ここで喧嘩沙汰にならなくてよかった……)
実乃里はいくらかホッとして、ピザ代の支払いを受けているが、なにかを蹴飛ばした音が聞こえてビクリと肩を揺らした。
斑目本部長が他の下っ端ヤクザに向け、「おい、二山!」と声を荒げている。
土地買収の件がどうのと話しだし、顧問弁護士と連絡がついたのかと腹立たしげに確認していた。
「まだなんです。留守電にメッセージは入れたんすけど……と、この説明、さっきしたばかりですよね。すいやせん」
「てめぇ、この野郎。この俺が朝っぱらから来てやってるっていうのに、なんで弁護士の方が後なんだ。早く連れてこいや!」
「す、すいやせん。もうすぐ折り返しの電話がくると思うんで、もう少し待ってください。ピザでもいかがですか?」
「いらねーよ。ったく、どいつもこいつも俺をイラつかせやがって」