極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
そんな彼女が最近、心を躍らせている。


(四日前と一昨日はこの時間に来たんだけど、今日はこないのかな……)


モーニングの残り時間を気にして鳩時計を見た時、ドアベルが鳴った。

「いらっしゃいませ」と振り向いた実乃里は、胸を高鳴らせて頬を染める。

初めて見た時から素敵だと感じている男性客が、今日も来店したのだ。


柔らかそうな毛質の短い黒髪。

斜めに流された前髪は、目にかかる長さで、彼はそれを気怠げに掻き上げている。

年齢は三十代半ばだろうか。

浅黒い肌と彫りの深いハッキリとした顔立ちで、切れ長の瞳は黒曜石のような輝きがあった。


細い縦縞の入った黒い長袖シャツは、袖を二段折り返し、グレーのスラックスに黒い革靴。

シャツのボタンはふたつ開いており、細い金の鎖が襟元にチラリと見える。

身長は百八十センチを超えていそうである。

逞しい筋肉質の体が、衣服の上からでも見て取れた。

外が暑かったせいなのか、眉間に皺を刻んでおり、それもまた実乃里にとっては大人の色気と渋さを感じさせるポイントであった。


(ちょっと危険な香りがするのよね。どんな仕事をしているんだろう。見た目は私の好みのど真ん中で、今日こそ名前を聞いてみたいな……)


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