極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
下っ端たちが『若頭』と龍司を呼ぶたびに、彼は極道なのだと、実乃里は強く意識することができる。
恋愛対象にできない危険人物なのだと自分に言い聞かせることで、心にブレーキをかけることができるのだ。
実乃里がドアから視線を外したら、ドアベルが鳴り、新たな客が来店した。
「いらっしゃいませ」と振り向いた実乃里は、息をのむ。
龍司ではなかったが、彼に匹敵するほどの見目好い男性のひとり客が入ってきた。
ダークスーツを着て、短めの黒髪はオールバックにし、前髪のひと房だけが額にかかっている。
背が高く整った目鼻立ちをしており、渋くて危険な雰囲気もある。
切れ長の瞳は龍司よりも冷たく、ナイフのように鋭い印象を受けた。
この店は実乃里の好みの男性を引き寄せるなにかがあるのだろうか……と驚き、胸を高鳴らせる彼女であったが、龍司に出会った時ほどのときめきではない。
なぜならその男性客は、五十歳になるかならないかの年齢に見える。
実乃里が恋愛対象として意識するには、年上すぎた。
「お好きな席へどうぞ」
実乃里は愛想よく微笑んで迎えたが、渋い男性客は彼女にではなく、カウンター内にいるマスターに話しかけた。
「新しい子が入ったんだな。前のバイトは辞めたのか?」
「そ、そうなんですよ。それで求人情報誌に載せたら、実乃里ちゃんが来てくれたんです。ひと月くらいになりますね……」
恋愛対象にできない危険人物なのだと自分に言い聞かせることで、心にブレーキをかけることができるのだ。
実乃里がドアから視線を外したら、ドアベルが鳴り、新たな客が来店した。
「いらっしゃいませ」と振り向いた実乃里は、息をのむ。
龍司ではなかったが、彼に匹敵するほどの見目好い男性のひとり客が入ってきた。
ダークスーツを着て、短めの黒髪はオールバックにし、前髪のひと房だけが額にかかっている。
背が高く整った目鼻立ちをしており、渋くて危険な雰囲気もある。
切れ長の瞳は龍司よりも冷たく、ナイフのように鋭い印象を受けた。
この店は実乃里の好みの男性を引き寄せるなにかがあるのだろうか……と驚き、胸を高鳴らせる彼女であったが、龍司に出会った時ほどのときめきではない。
なぜならその男性客は、五十歳になるかならないかの年齢に見える。
実乃里が恋愛対象として意識するには、年上すぎた。
「お好きな席へどうぞ」
実乃里は愛想よく微笑んで迎えたが、渋い男性客は彼女にではなく、カウンター内にいるマスターに話しかけた。
「新しい子が入ったんだな。前のバイトは辞めたのか?」
「そ、そうなんですよ。それで求人情報誌に載せたら、実乃里ちゃんが来てくれたんです。ひと月くらいになりますね……」