極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
結局、他の客にも言うような当たり障りのない言葉がけだけをして、実乃里は会釈すると逃げるようにテーブルを離れる。
すると「実乃里ちゃん、お会計」と、常連客に小さめの声をかけられた。
その人だけではなく、長居を決め込んでいた
他の客も次々と席を立ち、帰ろうとしている。
偶然なのかもしれないが、店内にいる皆が、刑事である杉谷を恐れているような雰囲気に感じられた。
それがなぜかという実乃里の疑問は、杉谷が二本目の煙草に火をつけた後に解ける。
客が杉谷だけになった店内にドアベルの音が響き、賑やかに入ってきた集団は、猿亘組の下っ端三人。
一拍遅れて龍司が、スラックスのポケットに片手を入れ、気怠げな表情で来店した。
ドア横には、小型のマガジンラックが置いてある。
客が買ってきて読み、いらないと置いていった新聞や雑誌各種が並べてある中から、龍司はスポーツ新聞を取り小脇に抱えている。
「いらっしゃいませ……」
取りあえずそう言って迎えた実乃里だが、彼らが今来店するのはまずいのではないかとヒヤリとしている。
カウンター裏ではマスターが呻くように「ああ、来ちゃったか」と漏らしており、洋子に至っては、常に開け放している調理場のドアを閉めてしまった。
杉谷と初対面の実乃里は知らなかったが、もしかすると過去にも店内で両者が鉢合わせ、火花を散らすような状況になったのかもしれない。
(まさか、拳銃を取り出したりはしないよね……?)
すると「実乃里ちゃん、お会計」と、常連客に小さめの声をかけられた。
その人だけではなく、長居を決め込んでいた
他の客も次々と席を立ち、帰ろうとしている。
偶然なのかもしれないが、店内にいる皆が、刑事である杉谷を恐れているような雰囲気に感じられた。
それがなぜかという実乃里の疑問は、杉谷が二本目の煙草に火をつけた後に解ける。
客が杉谷だけになった店内にドアベルの音が響き、賑やかに入ってきた集団は、猿亘組の下っ端三人。
一拍遅れて龍司が、スラックスのポケットに片手を入れ、気怠げな表情で来店した。
ドア横には、小型のマガジンラックが置いてある。
客が買ってきて読み、いらないと置いていった新聞や雑誌各種が並べてある中から、龍司はスポーツ新聞を取り小脇に抱えている。
「いらっしゃいませ……」
取りあえずそう言って迎えた実乃里だが、彼らが今来店するのはまずいのではないかとヒヤリとしている。
カウンター裏ではマスターが呻くように「ああ、来ちゃったか」と漏らしており、洋子に至っては、常に開け放している調理場のドアを閉めてしまった。
杉谷と初対面の実乃里は知らなかったが、もしかすると過去にも店内で両者が鉢合わせ、火花を散らすような状況になったのかもしれない。
(まさか、拳銃を取り出したりはしないよね……?)