極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
「若頭、堪えてください!」
一尾の必死の制止が店内に響く中、実乃里も彼らの方へ駆け寄ろうとしていた。
非力なことは承知しているが、止める人数は少しでも多い方がいいと思ったのだ。
龍司が逮捕されてしまえば、しばらく会えないだろうし、卵サンドも食べてもらえない。
それを想像しただけで寂しくなる実乃里は、「龍司さん、やめてください!」と場違いな可愛らしい声で呼びかけた。
騒ぎが静まったように感じたのは、気のせいだろうか……。
龍司以外の男たちの視線が実乃里に集まった時、彼女は慌てるあまりに足がもつれて前のめりに転びそうになる。
手から飛ばされたプラスチックの丸いトレーは、フリスビーのように弧を描いて横から杉谷の側頭部を打つ。
「うっ」と呻く杉谷の声を聞きながら、実乃里はばったりと床に倒れて込んだ。
すぐに顔を上げれば、立ち並ぶ下っ端たちの体の隙間に、龍司の手元が見えた。
杉谷の胸ぐらから外された手が素早く動き、紙幣の四分の一ほど大きさの半透明のビニールの小袋を、杉谷のジャケットの内ポケットに差し入れている。
「姉ちゃん、大丈夫か?」
「ドジっ娘だったのか。俺、そういうの嫌いじゃねーよ」
一尾たち下っ端は、深刻さも緊張も急に解けた顔をして笑いだした。
一尾の必死の制止が店内に響く中、実乃里も彼らの方へ駆け寄ろうとしていた。
非力なことは承知しているが、止める人数は少しでも多い方がいいと思ったのだ。
龍司が逮捕されてしまえば、しばらく会えないだろうし、卵サンドも食べてもらえない。
それを想像しただけで寂しくなる実乃里は、「龍司さん、やめてください!」と場違いな可愛らしい声で呼びかけた。
騒ぎが静まったように感じたのは、気のせいだろうか……。
龍司以外の男たちの視線が実乃里に集まった時、彼女は慌てるあまりに足がもつれて前のめりに転びそうになる。
手から飛ばされたプラスチックの丸いトレーは、フリスビーのように弧を描いて横から杉谷の側頭部を打つ。
「うっ」と呻く杉谷の声を聞きながら、実乃里はばったりと床に倒れて込んだ。
すぐに顔を上げれば、立ち並ぶ下っ端たちの体の隙間に、龍司の手元が見えた。
杉谷の胸ぐらから外された手が素早く動き、紙幣の四分の一ほど大きさの半透明のビニールの小袋を、杉谷のジャケットの内ポケットに差し入れている。
「姉ちゃん、大丈夫か?」
「ドジっ娘だったのか。俺、そういうの嫌いじゃねーよ」
一尾たち下っ端は、深刻さも緊張も急に解けた顔をして笑いだした。