極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
釣られて実乃里もヘラヘラと笑ってみたが、龍司が杉谷のポケットになにを入れていたのかが気になって仕方ない。
見ていたのは自分だけで、おそらくは入れられた杉谷も気づいていないはず……そう思っている実乃里だが、なにか違うようだ。
杉谷が動く。
テーブル上の煙草の箱をしまう振りをして胸ポケットにさりげなく手を入れた彼は、ビニールの小袋を指先で確認するように探っている。
何食わぬ顔をしているが、目線は不自然に天井を向いていた。
それを目撃してしまった実乃里は、杉谷も承知の上での、なにかの受け渡しであったのだと気づく。
(一尾さんたちに気づかれたくなかったのかな。それじゃあ、刑事さんが挑発したのも、龍司さんが食ってかかったのも、全て演技なの? うーん、それは考えすぎかな……)
龍司は振り上げた拳を下ろして舌打ちし、まだ床に伏せた状態の実乃里に振り向いた。
呆れ顔の彼は、実乃里の腰に腕を回してひょいと持ち上げると、少々荒っぽく助け起こしてくれる。
「喧嘩の時は、俺に近づくな」と注意をくれてから、スラックスのポケットに片手を突っ込み、速い足取りでドアへと向かう。
その途中でカウンターに一万円札を置いて、「迷惑料」と言葉を残し、先に出て行ってしまった。
下っ端たちも「マスター悪いな」と謝り、龍司を追って食事をせずに帰っていく。
実乃里は半開きの口で、無人のドア口を見つめつつ、その場に立ち尽くしていた。
(龍司さんの腕が私の腰に……。胸が高鳴るけど、それより疑問が解けなくて、モヤモヤする……)
見ていたのは自分だけで、おそらくは入れられた杉谷も気づいていないはず……そう思っている実乃里だが、なにか違うようだ。
杉谷が動く。
テーブル上の煙草の箱をしまう振りをして胸ポケットにさりげなく手を入れた彼は、ビニールの小袋を指先で確認するように探っている。
何食わぬ顔をしているが、目線は不自然に天井を向いていた。
それを目撃してしまった実乃里は、杉谷も承知の上での、なにかの受け渡しであったのだと気づく。
(一尾さんたちに気づかれたくなかったのかな。それじゃあ、刑事さんが挑発したのも、龍司さんが食ってかかったのも、全て演技なの? うーん、それは考えすぎかな……)
龍司は振り上げた拳を下ろして舌打ちし、まだ床に伏せた状態の実乃里に振り向いた。
呆れ顔の彼は、実乃里の腰に腕を回してひょいと持ち上げると、少々荒っぽく助け起こしてくれる。
「喧嘩の時は、俺に近づくな」と注意をくれてから、スラックスのポケットに片手を突っ込み、速い足取りでドアへと向かう。
その途中でカウンターに一万円札を置いて、「迷惑料」と言葉を残し、先に出て行ってしまった。
下っ端たちも「マスター悪いな」と謝り、龍司を追って食事をせずに帰っていく。
実乃里は半開きの口で、無人のドア口を見つめつつ、その場に立ち尽くしていた。
(龍司さんの腕が私の腰に……。胸が高鳴るけど、それより疑問が解けなくて、モヤモヤする……)