極艶恋～若頭は一途な愛を貫く～
五年ほど前のこと。

猿亘組の組長、猿亘慶造は、最近は高齢のため屋敷にこもりがちなのだそうだが、その当時はまだ月に二、三度は、会員制高級クラブで豪遊していた。

ある日、そのクラブに覆面集団が乗り込んできて、組長を襲おうとした。

集団は三十人ほどで、鉄パイプやナイフなどで武装していたらしい。

組長のお供として同行していたのは、武闘派と呼ばれる組員がふたり。

そのうちのひとりは、当時の若頭であった八田部だ。

拳銃を所持していなかったため、いくら喧嘩慣れしていても、たったふたりの護衛では組長を守り切れない。

その時、龍司が現れた。

彼は酒屋の配達というカタギの仕事をしており、そのクラブにはワインやウイスキーなどの注文の品を届けに来たところであった。

極道の組長とは知らず、ただ金持ちそうな年寄りが襲われていると思った龍司は、正義感から助っ人に入る。

武器はなく素手で戦っているというのに、龍司の強さは圧倒的であった。

覆面集団は組長に一撃も加えることができずに逃げていき、店の損害も少なく済んだという。

その後は組長が龍司の腕っぷしをすっかり気に入って、若頭補佐という高い地位を与え、猿亘組に迎え入れたらしい。


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