極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
「そんな大人数相手に戦えるなんて、すごいですね……」
実乃里は半ば感心し、半ば怯んでいた。
刑事もののドラマやファンタジー映画の戦闘シーンは楽しんで見ることができても、リアルの世界では遠慮したい。
どんなことでも殴り合わずに話し合いで解決すべき……と、平和な社会で平凡に育った実乃里は考える。
マスターは男性だからか、猿亘組の誰かから聞いたその話をしているうちに熱を帯び、龍司が戦っているところまで戻って、興奮気味にさらに詳しく説明する。
三人分のコーヒーは、いつまで待ってもできそうになく、洋子がふたり分のアイスティを作って、実乃里の分をカウンターテーブルに置いてくれた。
お礼を言った実乃里は籐の椅子に座り、アイスティにミルクをたっぷり入れて飲みながら首を傾げる。
味がおかしかったわけではなく、マスターが語る五年前の龍司に疑問を持ったのだ。
(覆面集団三十人を、ほとんどひとりでやっつけたって言ってるけど、本当かな。いくら強くても、普通に考えて無理じゃない?)
実乃里が思い出したのは、小学校低学年の頃のこと。
夏休みになる度に泊まりがけで遊びに来る、同じ歳の従兄弟がいた。
男の子向けのヒーロー番組が大好きだった従兄弟は、バイクに乗った仮面のヒーローに憧れて、テレビ放送を録画して繰り返し見ていた。
集団で襲いかかる悪役の雑魚キャラを、仮面のヒーローはひとりで簡単にやっつけていたけれど、あれはもちろん物語の中の話だ。
(マスターが聞かせてくれた五年前のことは、物語じゃないし台本があったわけでもないよね。ということは、やっぱり龍司さんが信じられないほどに強いという理解でいいのかな。ちょっと引っかかるけど。あの刑事さんとのやり取りも気になる……)
実乃里は半ば感心し、半ば怯んでいた。
刑事もののドラマやファンタジー映画の戦闘シーンは楽しんで見ることができても、リアルの世界では遠慮したい。
どんなことでも殴り合わずに話し合いで解決すべき……と、平和な社会で平凡に育った実乃里は考える。
マスターは男性だからか、猿亘組の誰かから聞いたその話をしているうちに熱を帯び、龍司が戦っているところまで戻って、興奮気味にさらに詳しく説明する。
三人分のコーヒーは、いつまで待ってもできそうになく、洋子がふたり分のアイスティを作って、実乃里の分をカウンターテーブルに置いてくれた。
お礼を言った実乃里は籐の椅子に座り、アイスティにミルクをたっぷり入れて飲みながら首を傾げる。
味がおかしかったわけではなく、マスターが語る五年前の龍司に疑問を持ったのだ。
(覆面集団三十人を、ほとんどひとりでやっつけたって言ってるけど、本当かな。いくら強くても、普通に考えて無理じゃない?)
実乃里が思い出したのは、小学校低学年の頃のこと。
夏休みになる度に泊まりがけで遊びに来る、同じ歳の従兄弟がいた。
男の子向けのヒーロー番組が大好きだった従兄弟は、バイクに乗った仮面のヒーローに憧れて、テレビ放送を録画して繰り返し見ていた。
集団で襲いかかる悪役の雑魚キャラを、仮面のヒーローはひとりで簡単にやっつけていたけれど、あれはもちろん物語の中の話だ。
(マスターが聞かせてくれた五年前のことは、物語じゃないし台本があったわけでもないよね。ということは、やっぱり龍司さんが信じられないほどに強いという理解でいいのかな。ちょっと引っかかるけど。あの刑事さんとのやり取りも気になる……)