極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
倉庫のコンクリートの床に直に座らされているので、尻が痺れてきた。

後ろに回された両腕はロープで縛られており、それは天井を支える鉄骨の柱に結ばれている。


実乃里が自力で逃げ出すことは不可能なので、半グレの男たちは側についていない。

彼女を攫ったふたりに加え、二十人ほどのチンピラが集まり、倉庫内の閉められたシャッター近くでたむろしている。

彼らも床に座り、カップラーメンやハンバーガーなどを食べ、スマホゲームをしたり時折笑い声をあげていた。

カップラーメンの香りが十数メートル離れた壁際にいる実乃里のところまで漂ってきて、お腹が鳴った。


(人質にも食料を与えてよ……)


その時、シャッター脇の鉄のドアが軋んで開き、見張りをしていた半グレの若い男が勢いよく入ってきた。


「逢坂が現れました。約束通り、ひとりです。案内していいですか?」


どうやら直接ここに呼び出したのではなく、近くのどこか他の場所を指定したようだ。

もし猿亘組の構成員が大挙して押しかけた場合は、逃げるつもりでいたのだろう。

相手は警察も手を焼く指定暴力団なのだから、半グレの彼らもリスクはある。


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