極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
複雑な思いの中で、実乃里が十五メートルほど先にある鉄のドアをハラハラと気にしていたら、五分ほどして蹴破るように開けられた。

入ってきたのは、いつもの黒いワイシャツとスラックス姿の龍司ひとり。

実乃里と彼の間に半グレ集団が立ち並んでいるため顔が見えないが、手足が長く広い肩幅としなやかで強そうなバランスのよいルックスは、間違いなく龍司である。


(本当に来てくれた……。マスターが猿亘組にみかじめ料を納めているから、助けてくれるの? それとも、放っておけないと思うくらいには、私を身近に感じてくれているのかな……)


喜びそうな心を戒め、にやけそうな頬を引き締める。


(この人たちは龍司さんに仕返しすることが目的なのに、来たら駄目だよ……)


「龍司さん!」と呼ぶ実乃里の何倍もの声量で、リーダー格の男が焦ったように問いかけた。


「逢坂、あいつらをどうした!?」


“あいつら”とは恐らく、見張りと案内役をしていた若者のことだろう。

先ほど知らせに来たのはひとりだったが、複数形なので、他に二、三人いたのかもしれない。

それに対し、龍司がどこか面倒くさそうな低い声で答える。


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