極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
「まさかマヨネーズから作ってるの? そこに業務用のやつがあるじゃない」

「手作りマヨネーズは新鮮で美味しいですよ。一分でできますし手間にはなりません。後はどうしようかな。微塵切りパセリを入れて、生の玉ねぎは辛いから、フライドオニオンの粉末にしようかな……」

「実乃里ちゃん、うちの卵サンドはそんなものを入れてないのよ」

「わかってます。他のお客様には通常レシピで作ります。でもこれを注文してくれた人は、スパイス系が苦手なようなので、なにかでアクセントをつけないと。すみません、やらせてください」


勝手なことをして申し訳ないという気持ちよりも、イケメンの彼を喜ばせたいという思いの方が遥かに勝り、実乃里はオリジナルの卵サンドを手際よく五分ほどで完成させた。

切り落とした端を洋子の口に入れれば、「あら美味しい」と笑ってくれて、客に提供することを許してくれる。

経営者夫妻が寛容な人でよかったと実乃里は微笑んで、卵サンドを盛り付けた皿をトレーにのせて客席へ運ぶ。


「お待たせしました。卵サンドです」


ブレンドコーヒーはマスターが先に出していたようで、イケメンの客は湯気立つカップに口につけている。

実乃里と卵サンドに気づいているだろうけれど、なにも言わず視線は新聞の紙面を追うのみだ。

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