極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
膝立ちした実乃里が大声で叫んだら、男たちの隙間に龍司の顔が見えた。

十五メートルほどの距離をおいて、ふたりの視線が絡み、こんな状況にも関わらず、実乃里の心臓が跳ねる。

彼の口の端は微かに上がり、楽しんでいるように見えるのは気のせいか。

それとも実乃里が無傷でいるのを見て、安堵しているのかもしれない。


龍司は実乃里の忠告を無視して、悠然とした足取りで前へ進む。

片手をスラックスのポケットに突っ込み、実乃里の方へまっすぐと、まるで男たちが見えていないかのようだ。

龍司からなにを感じ取ったのか、進路に立っていた若い男が怯んだように横にずれ、道を開けている。

けれども、すんなりといくはずはない。

リーダー格の男の「やれ!」という鋭い号令がかかると、半グレ集団が一斉に龍司に襲いかかった。


実乃里は悲鳴もあげられず、強い恐怖と焦りの中で、それを見ている。

龍司は右から振り下ろされた鉄パイプを、わずかに頭を動かしただけでかわし、左からスウィングされた金属バットを左手で難なく受け止め、後ろからナイフを手に突進してきた男は右足で蹴り飛ばしていた。


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