極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
マスターから聞いた通りの強さに、実乃里は目を丸くする。

けれども、やはり人数が多いので、反撃より防御に力を割いているように見えた。

群がるように襲い来る男たちの中には、奇声をあげて興奮し、龍司に殴られることさえ楽しんでいるようなクレイジーな者もいる。

直前に薬物でも摂取したかのような、異常さだ。


ハラハラしすぎて心臓が壊れてしまいそうな実乃里は、背後の気配に気づいていない。

誰かが身を屈め、壁伝いに実乃里に近づいており、ポンと彼女の肩を叩いた。

悲鳴をあげそうになれば口を塞がれ、誰かが実乃里の耳元で囁く。


「ロイヤルの姉ちゃん、俺だよ、二山だ。逃げるぞ。静かにな」


実乃里が目線を動かして斜め後ろを確認すれば、確かに色黒で茶髪、細身の二山がいる。

首を縦に振ると、二山は手を離してくれた。

そして立てた親指で、背後を指し示す。


「壁の穴、広げたんだ。そこから出られる」


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