極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
少し待っていると、ドアが開いて龍司が出てきた。

ヘッドライトに照らされて眩しそうに顔をしかめた彼は、少々長めの前髪を鬱陶しそうに掻き上げている。

何事もなかったのようにスタスタとワゴン車に歩み寄った龍司は、自動で開いたドアから乗り込み、実乃里の隣のシートに腰かけた。


彼が「出せ」と命じると、車は荒っぽく旋回し、細道に入ってスピードを上げた。

疲れたような呼気を前方に向けて吐き出した龍司の視線が、左に流される。

実乃里は彼から目を外せずにいたため、交わる視線に鼓動を弾ませた。

「怪我はないか?」と心配してくれる彼に「はい」と答え、胸を熱くする。


(私はただ拘束されていただけで、傷つけられるようなことはなかった。龍司さんの方こそ、大怪我を負ってもおかしくない状況だったのに、私を心配してくれるなんて……)


よく見れば黒いワイシャツ の肩付近に、ナイフで切られたような裂け目がある。

乾いてはいるが、うっすら血が染みているようで、実乃里はハッとした。


「龍司さん、ここーー」

怪我をしていると伝えようとして裂け目に手を伸ばしたら、その腕を掴まれ、軽く引き寄せられた。

彼と実乃里の体の距離は二十センチほどで、車体が揺れたら腕や肩が触れそうに近い。

目を丸くして胸を高鳴らせる実乃里であったが、彼女の手を見る龍司の顔つきが急に険しくなったため首を傾げる。


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